1980年代は、バラードを得意とするR&B男性シンガーが数多く現れた時代でもありました。
 ルーサー・ヴァンドロスとフレディ・ジャクソンという”二大巨頭 ”のおかげとも言えますが、今思えばめずらしい時代でした。
 
 それから、ルーサー、フレディに匹敵する才能と技量を持ちながら、R&Bの範疇を超えてスタンダードなスタイルで人気を得た人たちがいます。僕は「王道御三家」と勝手に名付けましたが、今回はその三人をご紹介します。そんな彼らも86年あたりには、アーバンでメロウなR&Bの流儀の作品を作っています。

 まずははジェフリー・オズボーン。1970年代L.T.Dというバンドのボーカリストで、80年代にジョージ・デュークのプロデュースでソロ・デビューを果たします。 ルーサーはマーカス・ミラーと組みましたが、”フュージョン”のアーティストとがっちり組んだことが両者に共通しています。83年のセカンドアルバム「STAY WITH ME TONIGHT」は当時日本では「貴女と過ごすおしゃれな夜」なんて副題がつけられていました。かなり小っ恥ずかしいけど、そんな時代だったんです。

 86年には彼の最大のヒットが生まれました。曲作りにブルース・ロバーツというAOR系のソングライターが加わっているのもいかにもこの時代らしいことです。

  次は、ピーボ・ブライソン。今では、「美女と野獣」と「ホール・ニュー・ワールド」を歌った人で集約されそうですが、もともとはダニー・ハサウェイが亡くなった後、ロバータ・フラックの相棒に抜擢された、音楽的素養がしっかりあって曲作りにも長けた才人です。彼の本領を知るには70年代後半の彼のアルバムを聴いた方がいいのですが、80年代中期のエレクトラに移籍してリリースした作品は、アーバンでアダルトな時代にフィットしたものでした。この時代の代表曲は、ホイットニーの「すべてをあなたに」や「グレイレスト・ラヴ・オブ・オール」などを書いたマイケル・マッサー作の「If Ever You're In My Arms Again」です。

 そして、86年にその名もズバリ「Quiet Storm」というアルバムを出していますので、そこからのファースト・シングルも紹介します。

   そして最後はジェイムス・イングラム。クインシー・ジョーンズの秘蔵っ子として、彼のアルバム「愛のコリーダ」で稀代の名バラード「Just Once」を歌いました。
 
 その後のパティ・オースティンとのデュエット「あまねく愛で」と「君に捧げるメロディー」も素晴らしい曲でした。この人の場合、キャリアのスタートからR&Bとポップをクロスオーバーした王道のボーカル、という佇まいでしたが、86年には、時代の風に従って、クワイエット・ストームなアーバン・アルバムを作ります。組んだプロデューサーはキース・ダイアモンドでした。